囚われて……

ふと我に返れば、すべては 遅すぎて、手足に蜘蛛の糸(くさり)、
扉(ドア)に鍵。

僕を乱す不吉(きゃしゃ)な手、謎に充ちた黒曜石(くろい)の眼、 
僕を監禁(しば)する華美な微笑する(あまいわらい)聲。

錯乱(くるい)し出した夏の気怠過ぎる夜に、
僕はあなたの計略(わな)に陥落(おち)して居た。
"何一つ(なにも)要求(もとめ)は仕無い、唯僕と迷宮(ここ)に居て、奇麗なままで居てね。" 
と魔物(きみ)が。

噎せるほどあまい香りに導かれ(さそわ)、迷い込む廃墟の庭園(にわ)では、
忘れ去られてゆく硝子(ガラス)の温室、出口など何処にも無いから。

愛してる、愛してよ、愛し過ぎて、苦し過ぎて。
愛してる、愛してよ、切な過ぎて、堪らなくて

あれは去年の夏、魅惑的(つよ)過ぎる恋人(はな)の香水(か)  
官能(LUSCIOUS)と云う堕天使(サタン)の隠れ家(にわ)で
あの甘い香りに、あの揺ぐ灯(あかり)に、僕の頭が変に成って行く。
そして恋の奴隷、鎖に繋がれ、熱帯の薔薇(はな)に身を任せる時、
僕は蝶じゃ無いのに、強い薬品(くすり)嗅がせて、
今夜は何をするつもりなの?

汗滲む薄い胸板(むね)に鋭い(ほそい)花芯(はり)を突き立てれば、
喘ぐ吐息、甘い溜息、息絶えそう、このままでは。

噎るほど厭な(あまい)香りに誘惑され(さそわ)、迷い込む廃虚の庭園(にわ)では
朽ちかけた館(いえ)の硝子(ガラス)の標本箱(おんしつ)、
"奇麗なまま保存したくて(とじこめ)"と、貴方(きみ)。

囚われて、愛(いと)し過ぎて、囚われて、狂い過ぎて、  
囚われて、切な過ぎて、囚われて、堪らなくて、
愛しい毒蜘蛛(ひと)、見逃してよ、僕を逃がして、
蜘蛛(きみ)の巣(わな)から、
愛してる、でも憎んでる、ねえ許して、もう逃がして(いかせ)
……この残虐(こい)の花園(わな)から。


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